事業者において、一般消費者と取引を行う場合、いちいち契約条件を交渉するわけにもいかないため、約款や利用規約を定めて、それに従って大量の取引を行うことがママあります。
しかしながら、消費者との契約に関しては、消費者契約法が存在し、仮に約款等に明示的に定めておいてもその効力が制限される場合があることについては、事業者は認識しておくべきです。
例えば、消費者契約法第8条においては、事業者の消費者に対する債務不履行責任、不法行為責任、瑕疵担保責任等の損害賠償責任を「全面的に免責」する条項を無効としています。また、事業者側の故意・重過失が存する場合の責任の「一部免除」又は「制限」(例えば上限額の設定など)を規定する条項についても、無効であるとしています。
そのため、事業者においては、自社の規約等にそのように規定をしたとしても、無効とされる、言いかえれば損害賠償責任を負わないと安心することはできません。
また、その逆に、消費者に対して、契約解除の場合に過大な損害賠償を負わせるとする条項も無効とされます(法9条)。
たとえば、サービス提供事業者がキャンセル防止とその損害をカバーする目的で高額なキャンセル料を規定していたとしても、「同種の消費者契約の解除に伴い、当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える」キャンセル料や、その超える部分が無効とされることがあります。
また、新古車の売買契約の解除に伴う約定違約金に関する事例において、売買契約の対象車両はほかにも販売可能なため、販売から得べかりし利益は平均的な損害には該当しないと、判断した裁判例(大阪地裁平14.7.19判決)も存在します。
よくある話ですと、入学前に入学を辞退した場合の私立大学の授業料の不返還という問題についても、平均的な損害額を超える部分については無効とされることがあります。
なお、特定商取引法上の特定継続的役務の提供契約については、別途上限も定められているので、対象となる事業者(エステや、外国語、学習塾、パソコン教室、結婚紹介所など)は注意が必要です。
以上はその一例ではありますが、事業者としては、規約等に定めていても無効となる場合があることを認識しておく必要があります。もっとも、無効になるリスクを認識したうえで、あえて規定をしておくことで、抑止効果を企図するということはあり得るとは思います。
逆に消費者としては、仮に規約等にできないと規定をされていても、場合によっては無効とされる可能性があることを認識して、泣き寝入りをしないことも重要だと思います。